神の宿る写真「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」展 @ 東京オペラシティ アートギャラリー

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリーアート
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2022年12月、「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」展を観に、初台の東京オペラシティアートギャラリーに行きました。

久しぶりに川内作品を見ましたが、素晴らしい、やはり自分はこういう写真に惹かれる、と思いました。

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

国内の美術館では約6年ぶりの写真家・川内倫子の個展となる本展は、写真、映像、立体など、さまざまな手法による作品を通して、川内の創作の本質や問題意識の核に迫る内容です。
空間設計を建築家の中山英之が手がけ、鑑賞者が会場で作品に向き合う体験を身体感覚として経験できるよう、川内とのディスカッションを重ね、インスタレーションとして展示が組み立てられています。
展覧会タイトルにもなっている新作シリーズ〈M/E〉を中心に据え、未発表作品や過去に発表したシリーズを織り交ぜながら、この10年の川内の活動に焦点をあてます。

出典:https://rinkokawauchi-me.exhibit.jp/works/

 

川内倫子の写真には神の視点を感じる

入り口に掲げられた作家ステートメントの内容がとてもよかった。

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

 

身体を移動し、撮影したものと向き合うという行為でしか得られないものがある。

それはなぜいまここに生かされているのか、という答えのない問いに

少しでも近づくための、自分にとって有効な手段だ。

そんな生活を続けて30年以上が経ち、改めて現在の自分の立ち位置を確かめたくなった。

地域や国というくくりではなく、ひとつの星の上に在るということを。

20年前に一度だけ訪れたアイスランドに2019年の夏に再訪したことで、それは叶えられた。

地球の息吹を感じる間欠泉や、人間の持つ時間を遥かに超える氷河を目の当たりにすることで、

自分の存在が照らされたようだった。

とりわけ休火山の内部に入ったときの体験が強く印象に残っている。

上を見上げると火口の入り口から光が差し込んでいて、その形は女性器を想像させた。

じっと見ていると自分が地球に包まれている胎児のような気がしてきて、

いままでに感じたことのない、この星との繋がりを感じた。

作家ステートメントより抜粋

 

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

 

自分はなぜ、川内倫子の作品に惹かれるのか?
改めて考えてみた。

川内作品を見ると、慌ただしい毎日のなかで後回しにしてしまいがちな大切なことを思い出す。
ふと詩集を手に取って、つかのま詩の世界にスリップした時の感覚に似ている。
それがとっても心地よい。
そこはきっと、この世ではないところ。
川内倫子の作品は身の回りのものことを撮っているのにもかかわらず、「あの世」の佇まいがあるのだ。
神の視点を想起させるということなのかもしれない。

 

〈4%〉

球体や水平線など、宇宙をイメージさせる被写体が多く登場するシリーズ。
2011年、2012年にアメリカで制作された作品群。日本では初公開。

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

 

思索的で哲学的。
雰囲気は静かなのにとっても饒舌な作品たち。

 

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〈One surface〉

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

スピーカーで詩が朗読されていた。
禅的なインスタレーション。

 

〈An interlinking〉

ローライフレックスの6×6フィルムでとらえた、正方形フォーマットで撮られたシリーズ。

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

 

正面の作品は、「光と影」。
2011年4月に訪れた津波の被災地で白と黒のつがいの鳩と出会ったことで生まれた作品だそうだ。

 

〈Illuminance〉(映像)

2011年スタートの作品。
2つの映像を並べて、見開きの写真集のようにしている。
展示される度に新しく映像を追加していくことをコンセプトとした、進行形の作品だ。
川内の活動の軌跡でもある。

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

 

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〈あめつち〉

熊本県阿蘇で古くから行われてきた野焼きを、4×5のフィルムカメラを用いて撮影したシリーズ。

初めて阿蘇の大地に立ったとき、川内は「自分が惑星の上に立っている」という感覚を抱いたという。

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

 

〈A whisper〉(映像)

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

 

川内の住む千葉の家の、近所の川を撮影した映像作品。

展示室の天井・壁や床に投影されており、鑑賞者は全身で水面のゆらぎやきらめきを堪能する。
真っ暗な部屋なのに眩しさを感じた。

 

〈M/E〉

2019年より川内が取り組んできた新作シリーズ。

〈M/E〉とは、「Mother (母)」と「Earth (地球)」の頭文字であり、「Mother Earth (母なる地球)」の意味を持ちながら、さらに「Me(私)」を指し示す言葉でもあるとのこと。

ミクロとマクロの視点から自然などを写し取ったシリーズ。
アイスランドの氷河や冬の北海道の雪景色、家族や生き物の姿がさまざまな見せ方で展示されていた。

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

自然。本当に美しい。

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

対象物に向き合う姿勢が、真摯で切実。
川内の作品を見ていると、それが伝わってくる。

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

対にすることで、想起される豊かなイメージ。
鑑賞者のなかで作品が完成するのだと思う。

神は宇宙にも細部にも同じく宿る。

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

建築家の中山英之氏による空間設計。
繊細で素晴らしかった。

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

アクリルのキューブにフォトプリントを施した手法は、本展で初めて採用とのこと。

購入もできるそうです。手に取れるのが素敵。

 

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

川内倫子が手がけたharuka nakamuraのMVの展示もあった。

自分はharuka nakamuraが大好きで、Youtubeを見ていて川内の映像が使われていることを知ったときには嬉しかった。

 


Light of dance / baobab + haruka nakamura MV by 川内倫子

 

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」展は現在、滋賀県立美術館に巡回中です。
(2023.1.21 sat.-3.26 sun.)

 

同時開催の「連作版画の魅力」展では、李禹煥(リ・ウファン)作品「点より」「線より」シリーズがありました。

「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

 

川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
期間:2022年10月8日[土]─ 12月18日[日]

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