2023年「未完の聖堂」の完成が見えてきた!「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。アートとデザイン
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「ガウディとサグラダ・ファミリア展」を観に、竹橋の東京国立近代美術館に行きました。

予想通り非常に混雑しておりました(社会科学習?と思われる中学生らしき団体さんも!ノートを取りながら真剣な表情。なかなか動かない……笑)が、とても楽しめました!

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

ガウディとサグラダ・ファミリア展
ガウディとサグラダ・ファミリア展公式サイト

今回開催されるガウディ展は、長らく「未完の聖堂」と言われながら、いよいよ完成の時期が視野に収まってきたサグラダ・ファミリアに焦点を絞り、この聖堂に即してガウディの建築思想と造形原理を読み解いていくものです。
図面のみならず膨大な数の模型を作ることで構想を練り上げていったガウディ独自の制作方法に注目するとともに、「降誕の正面」を飾る彫像も自ら手掛けるなど建築・彫刻・工芸を融合する総合芸術志向にも光を当て、100点を超える図面、模型、写真、資料に最新の映像をまじえながらガウディ建築の豊かな世界に迫ります。

出典:https://gaudi2023-24.jp

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

 

2012年に見たサグラダ・ファミリア聖堂

2012年にバルセロナを旅した際、世界遺産サグラダ・ファミリアを訪れました。

そのとき撮った写真を見返すと、10年という歳月の流れを感じます。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

グエル公園から見下ろす2012年のサグラダ・ファミリア。
遠目に見ても、中央部がまだまだ低い。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

正面から見上げたところ。
西側の「受難の正面」

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

「磔刑」の場面。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

「ペテロの否認」の場面。

 

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

日が昇る東側にある「降誕の正面」

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

中央の塔「ベツレヘムの星」を取り囲むようにして、「歌う天使」日本人彫刻家・外尾悦郎氏がこれに先んじて石膏像を制作したことは後述。こちらは石像)が並ぶ。
その両脇には「祝福する楽天使たち」

降誕の場面にふさわしく、扉ロ空間は「洞窟」に見たてて、アーチには鍾乳石を使用しているとのこと。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

サグラダファミリアの着工は1882年。
財政難、スペイン内戦(1936)、コロナ禍(2020)などでたびたび建設は中断された。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

溶けたトカゲ?のようなもの。ユーモラス。守り神かな?

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

中に入ると、まだステンドグラスの入ってないところもあった。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

サグラダ・ファミリア聖堂内の装飾や、ガウディの他の作品をご覧になりたい方はこちらもどうぞ。

 

外尾悦郎氏の「歌う天使たち」とその人生に胸をうたれた

さて「ガウディとサグラダ・ファミリア展」です。

前半はバルセロナに点在するガウディの代表作、カサ・ビセンス、カサ・ミラ、カサ・バッリョ、グエル公園関連等の展示。
「歴史」「自然」「幾何学」のポイントからそれらの建築を読み解いていました。

撮影が可能だったのは、「サグラダ・ファミリアの軌跡」の章のみ。
そちらを中心に書こうと思います。

 

アール・ヌーボーの建築 #3 ~バルセロナ編
外尾悦郎《サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:歌う天使たち》

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

こちらは「降誕の正面 : 歌う天使たち」の石膏像。
日本人彫刻家・外尾悦郎氏の手によるものです。

サグラダ・ファミリア聖堂の降誕のファサード(正面)に1990-2000年のあいだ、実際に設置されていました。

 

「降誕の正面」の彫刻群のうち、中央の扉、生誕の場面のすぐうえに9体の歌う天使像がある。その制作を担当したのが、1978年以来サグラダ・ファミリア聖堂で彫刻家として従事する日本人・外尾悦郎だ。外尾はガウディが残したわずかな資料を頼りに、これらの影像を作った。本展で展示されている石膏像は、2000年に砂岩で制作された石像に置き換わるまで実際に「降誕の正面」に設置されていたもの。聴覚に訴えるだけでなく、親しみやすい姿と所作で、人々を聖書の世界に導く役割を果たしている。

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」作品説明ボードより

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。
中央の「ベツレヘムの星」の両脇に「歌う天使」(2012年筆者撮影。外尾悦郎氏の石膏像ののちに設置された石像)

 

外尾悦郎氏の人生には、深い感銘を受けます。

「NHKアカデミア」という番組でご自身が語っていたのですが、日本で美術を教えていた25歳のある瞬間(運転中の信号待ちで、路側帯の御影石をぼんやりと見ていたほんの数秒)、自分の人生には石が足らない、と感じたのだそうです。

「石を彫りたい」という一心で仕事を辞め渡欧し、立ち寄った同聖堂で働き始めました。
彼はこの出来事をプロビデンシア(神意)と表現しています

キリスト教の聖堂建築に、東洋から来た若者が携わる……周りの抵抗があったことは想像に難くありません。言葉にはできないような厳しい局面もあったに違いないと思います。

偏見や圧力と戦いながら着実に経験を積み、生前のガウディが描いていた聖堂の理想像に少しでも近づけようと仕事を続けてきた外尾さん。

サグラダ・ファミリアに従事して45年が経ちました
ガウディが聖堂で過ごした43年すらも超えました。

現在は芸術工房監督で、聖堂メインタワーの「イエス・キリストの塔」の内部デザインも担当されています。

映画のような人生です。。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

出典:https://www2.nhk.or.jp/learning/academia/video/?das_id=D0024300119_00000

↑こちらで公開講座が閲覧できます。

 

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サグラダ・ファミリアの完成が見えてきた!その予定全体像は?

現在の建設の進行具合はどれくらいなの?

2012年にサグラダ・ファミリアを訪れた際、自分はその完成形についてほとんど知識がありませんでした。

今回の展示を見て、聖堂の予定全体像を把握できたことが個人的には大きな喜びでした。

ちなみに「サグラダ」は「聖なる」「ファミリア」は「家族」を意味します。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。
展示されていたボード

現在の建設の進行具合は、いったい全体のどれくらいなのでしょうか?

聖堂の運営を統括する総責任者チャビエル・マルチネス氏によると、完成したのは全体の約70%
だが、「最新技術で建築が加速しており、数十年もかからずに完成するだろう」とのことでした。
(東京新聞 20230622による)

 

聖堂3つの正面ではキリストの生涯が語られている

聖堂の正面は3つ

東側「降誕の正面」
西側「受難の正面」
南側「栄光の正面」←これから建設が進みます
(北側は「後陣」

それぞれの正面では、イエス・キリストの生涯が表現されています。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。
展示されていた説明ビデオ

 

「イエス・キリストの塔」やそれを取り囲む塔がそれぞれに特徴的

聖堂中央には、十字架を頂いて聳える「イエス・キリストの塔」(建設中・172.5mの予定)。

このメインタワーの内部デザインを担当する前述の外尾悦郎氏は「世界で唯一、イエスの魂の中に入れる教会になる」と語ります。(東京新聞 20230622による)

「イエス・キリストの塔」の周りを、マルコ、ルカ、ヨハネ、マタイの4塔(= 福音書作家の塔・各135m)がとり囲みます。

マルコの塔模型の展示がありました。

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。
サグラダ・ファミリア聖堂、マルコの塔模型 2020年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室

 

そして、「降誕の正面」「受難の正面」「栄光の正面」のそれぞれに4本、計12本ある鐘塔は、キリストの12使徒を表しているそうです。

 

さて、「後陣」には「マリアの塔」(138m)があります。
こちらは、2021年12月に完成しました。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

出典:【サグラダ・ファミリア】聖母マリアの塔が完成、巨大な星を点灯。ローマ教皇「皆さん全員のために輝いています」
https://www.huffingtonpost.jp/entry/sagrada-familia_jp_61b049d0e4b0f76117b58bde

 

点灯の瞬間には、コロナ禍のなか大勢の市民が集まり、一斉にカメラを向けている様子がニュースでも見られました。みな感慨に耽った様子で、泣いている方も多く見えました。

 

塔頂点の装飾デザインに特にこだわったガウディ

「マリアの塔」の頂点装飾・試作品の展示がありました。

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。
アンリク・プラ・ムンファレー《サグラダ・ファミリア聖堂、マリアの塔:星の冠の試作品》2020年

星形は聖母マリアの象徴とのこと。

ガウディは塔の頂点の装飾デザインには大きな工夫をこらしました。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

写真は、天に頂くシンボル:「鐘塔頂華」10分の1模型 (受難の正面側)。

 

「受難の正面」「降誕の正面」どちらにも聳えるこの「鐘塔頂華」に関しては、20種類もの案が存在したといいます。
大きなガラス・ボールを頂く案などもあったなか、こちらのデザインに決まりました。

特に色にはこだわりを持ち、金と赤のガラスタイルはビザンチンのモザイクタイルの伝統を受け継ぐヴェネツィアの工房に発注したとのことでした。

 

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窓と採光について〜 ステンドグラスの意味

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。
2012年筆者撮影

光は神の象徴で、神の家(聖堂)は光に満たされた空間でなければならない。
この理想は、ゴシック大聖堂において初めて実現したといいます。

そして、北欧のゴシックと南欧スペインのゴシックでは窓の大きさが極端に異なるとのことです。

緯度が高く太陽の光が弱い前者の窓は大きく、緯度が低く光にあふれる後者の窓は小さい。「聖堂の光は必要な量があればよく、多くても少なくてもいけない」、なぜなら「聖堂は瞑想の場でなければならず、過度の強い光は気持ちを散漫にし、人を落ち着かせないからだ」とガウディはいう。しかし、サグラダ・ファミリア聖堂の窓は北欧並みに大きい。これでは必要量以上の強い光が入ってきてしまう。この光量を調整するのがステンドグラスの役割だ。
側廊外壁の大窓や高窓にはステンドグラスが設置され、堂内に彩りを与えている。これらに朝日や午後の陽光が直射すると、驚くほどの明るさとなる。このステンドグラスは後世の判断により製作されたものだ。
(太字・棒線は筆者修飾)

展示されていたボードより

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。
2012年筆者撮影。柱に映じたステンドグラスのかげが美しかった。

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ガウディのことば

展示会場のところどころにガウディが語った言葉が掲げられていました。

「独創性とは起源に戻ることである」
オリジナリティとはオリジンに戻ること。独創的とはある意味突飛なことだと思っていた。目を開かされました。
「すべては大自然の偉大な本から出る」
「創造は人を介して途絶えることなく続くが人は創造しない。人は発見し、その発見から出発する」

ガウディの創作の真髄や基本姿勢が伝わってきます。

 

以下のサイトにもガウディの珠玉の名言がまとめられていました。

「世の中に新しい創造などない。あるのはただ発見である」

「美しい形は構造的に安定している。 構造は自然から学ばなければならない」

「自然界には直線は存在しない。 直線は人間に属する。 曲線は神に属する」

出典:https://soul-brighten.com/gaudi/

 

ミュージアムショップでは興味ひかれるグッズがずらり。

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館に行きました。

 

着工から約140年。
ガウディの没後100年となる2026年には聖堂中央に位置する「イエスの塔」が完成予定です。

その頃にまたバルセロナを訪れて、サグラダ・ファミリア聖堂に再会できたらいいなぁ、と考えています。

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」詳細

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」
会期:
2023年6月13日(火)~9月10日(日)
※会期中、一部展示替えがあります。詳細は作品リストをご参照ください。
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
主催:東京国立近代美術館、NHK、NHKプロモーション、東京新聞
当日券チケット 一般 2,200円
巡回情報:
滋賀会場 2023年9月30日(土)~12月3日(日) 佐川美術館
愛知会場 2023年12月19日(火)~2024年3月10日(日) 名古屋市美術館

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