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マンダラデザインアートブログのsachiです。
「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」を観に森美術館に行きました。
世界的なコロナ禍のなか、この地球上のあちらこちらに、時には情熱的に、時には怒りをこめて、また時には自分の好きなものを淡々と表現し続けている人々がいる。ー
そのことを目の当たりにした、たいへん勇気づけられる展示でした。
チケットは持っていましたが、事前に森美術館のサイトで入場時間をオンライン予約。
自分が訪れたのは雨だったからか、混雑しているスペースは皆無でした。
参加アーティストは以下の女性たち。
世界14か国から16人。
- エテル・アドナン 1925年ベイルート生まれ、パリ在住
- フィリダ・バーロウ 1944年英国、ニューカッスル・アポン・タイン生まれ、ロンドン在住
- アンナ・ボギギアン 1946年カイロ生まれ、同地在住
- ミリアム・カーン 1949年スイス、バーゼル生まれ、ブレガリア在住
- リリ・デュジュリー 1941年ベルギー、ルーセラーレ生まれ、ローフェンデゲム在住
- アンナ・ベラ・ガイゲル 1933年リオデジャネイロ生まれ、同地在住
- ベアトリス・ゴンザレス 1932年コロンビア、ブカラマンガ生まれ、ボゴタ在住
- カルメン・ヘレラ 1915年ハバナ生まれ、ニューヨーク在住
- キム・スンギ 1946年韓国、扶餘(プヨ)生まれ、パリ在住
- スザンヌ・レイシー 1945年カリフォルニア州ワスコ生まれ、ロサンゼルス在住
- 三島喜美代 1932年大阪府生まれ、同地および岐阜県在住
- 宮本和子 1942年東京都生まれ、ニューヨーク在住
- センガ・ネングディ 1943年シカゴ生まれ、コロラド州コロラドスプリングス在住
- ヌヌンWS 1948年インドネシア、ラワン生まれ、ジョグジャカルタ在住
- アルピタ・シン 1937年インド、バラナガル生まれ、ニューデリー在住
- ロビン・ホワイト 1946年ニュージーランド、テ・プケ生まれ、マスタートン在住
出典:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/anotherenergy/02/index.html
どうです。
最高齢106歳、一番若者でも72歳。
アーティストとしてのキャリアは全員50年以上だという。
それだけでも励まされるのに、彼女らの産み出す作品スケールの大きさ!ほとばしるエネルギーの凄まじさ!
自分は圧倒され、いたく感動させられました。
本展では、絵画、映像、彫刻、大規模インスタレーションにパフォーマンスなどの多彩で力強い作品約130点を通して、彼女たちを突き動かす特別な力、「アナザーエナジー」とは何かを考えます。世界が未曾有の事態にある今、これら16名のアーティストたちが確固たる自らの信念を貫き生涯をかけて歩み続けている姿は、私たちに困難を乗り越え、未来に向けて挑戦するための力を与えてくれることでしょう。
なかでも特に印象が強かった10人はこちら。
撮影OKだったので、写真とともに展覧会の感想をレポートします。
(一推しはラストの三島喜美代氏!)
Contents
フィリダ・バーロウ
フィリダ・バーロウ。1944年英国、ニューカッスル・アポン・タイン生まれ、 ロンドン在住。
入って最初にご対面した作品がこれ。で、でかい…。
トップバッターの風格は充分過ぎるほど。
フィリダ・バーロウ《アンダーカバー 2》2020年
木材、合板、セメント、スクリム(布)、石膏、ポリウレタンフォーム、塗料、PVA(合成樹脂)、キャラコ、鉄
しかも若い頃の作品などではなく、制作年が2020年ではないか。。コロナ元年。
フィリダ氏は、御年76歳。
それでなくとも重そうな素材… 体力勝負のアート作品とも言える。
絵画と彫刻を制作してきた作家だそう。
朱やオレンジやピンクなどビビッドな色が華やかで、そういった意味でもオープニングに相応しい作品だと思った。
ロビン・ホワイト
ロビン・ホワイト。1946 年ニュージーランド、テ・プケ生まれ、 マスタートン在住。
こちらもスケールの大きい作品だ。
トンガの伝統的なタパ(樹皮布)で作られているとのこと。トンガの女性たちとの共同制作だそうだ。
ただ美しいだけではない、格調の高さみたいなものを感じた。
右:ロビン・ホワイト&ルハ・フィフィタ 《大通り沿いで目にしたもの(「コ・エ・ハラ・ハンガトゥヌ: まっすぐな道」シリーズより) 》 2015-2016 年
顔料、植物染料、樹皮布 2,400 × 380 cm
左:ロビン・ホワイト&飯村惠以子 《夏草》 2001 年
油彩、壁紙
《夏草》は、ニュージーランドのフェザーストン日本人捕虜収容所で起きたフェザーストン事件の犠牲者に哀悼の意を表する作品。
タイトルは、松尾芭蕉の「夏草や兵どもが夢の跡」からきているという。
スザンヌ・レイシー
スザンヌ・レイシー。1945 年カリフォルニア州ワスコ生まれ、 ロサンゼルス在住。
ソーシャリ―・エンゲージド・アートの先駆者。
「コミュニティとの対話を通じて、女性解放運動や人種差別、高齢化、暴力などの社会的課題や都市の問題に取り組んできた」という。
スザンヌ・レイシー《玄関と通りのあいだ》 2013/2021 年
3 チャンネル・ビデオ、デジタルプリント 20 分 2 秒(ビデオ)
スザンヌ・レイシー《避けられない連合》1976 年
デジタルプリント、新聞記事、広告、手紙、ノート、 フォト・コラージュ、写真資料
老化における性差別(年老いて軽視される女性たち)に光を当てた作品で使用された椅子のセットが展示されていた。
キム・スンギ
キム・スンギ。1946 年韓国、扶餘(プヨ)生まれ、パリ在住。
映像・写真や彫刻、パフォーマンスやインスタレーションなど様々な手法での表現作品で国際的に活躍しているという。
キム・スンギ《森林詩》 2021 年 ミクスト・メディア・インスタレーション
《森林詩》は、自身の60本のビデオ作品がランダムに繰り返される映像と、オンラインで開催される詩の朗読パフォーマンスを組み合わせたインスタレーション。
キム・スンギ氏は、近年はロボットやAIを使ったインスタレーションも手がけているそうだ。
アンナ・ボギギアン
アンナ・ボギギアン。1946 年カイロ生まれ、同地在住。
アンナ・ボギギアン《シルクロード》 2021 年 インスタレーション
紙人形劇のようなインスタレーションで世界各地の社会や文化などを表現する手法を取っている。
日本で初めて作品を発表するにあたって、日本の絹産業をもとにひとつの物語を描いた。
宮本和子
宮本和子。1942 年東京都生まれ、ニューヨーク在住。
ニューヨークを拠点にミニマリズムに関する研究を続け、活動を続けてきた。
カルメン・ヘレラ
カルメン・ヘレラ。1915 年ハバナ生まれ、ニューヨーク在住。
米国における幾何学抽象表現の先駆者のひとり。
パリやニューヨークで活動を続けていたが、作品が本格的に評価され始めたのは、90歳を過ぎた2005年だったという!
それ以後は内外の主要美術館で個展が開かれ、作品の価格も高騰。
中央:カルメン・ヘレラ《赤い直角》2017-2018年
塗料、アルミニウム
2016年(101歳)には、ニューヨークのホイットニー美術館で、大規模な回顧展「カルメン・ヘレラ:視覚の直線」が開催された。
禅の思想にも関心があったとのこと。
側面から見ても面白い。
流行が激しく移り変わるアート界で、頑なに幾何学の抽象絵画を制作してきて70年。
105歳の今も、大型のパブリックアートを発表するなど、精力的に活動しているという。
なんてこった!スーパーウーマンだ!
ヌヌン WS。1948 年インドネシア、ラワン生まれ、 ジョグジャカルタ在住。
アクリル絵具、キャンバス
アクリル絵具、キャンバス
ジャワ島の更紗・バティックや、イカットという織物をイメージさせる絵画だ。
ミリアム・カーン
ミリアム・カーン。1949 年スイス、バーゼル生まれ、ブレガリア在住。
彼女の作品は、16人の中でもっとも毒があり、観る者に思索を促すようなものだった。
社会的なテーマも多く含み、少なくともただ美しいだけの作品ではない。
ユダヤ人の両親を持つという生い立ちも、彼女の創作の源泉に深く関係しているのだろう。
描かれている人間が、非常にプリミティブな印象で、それが潜在意識のどこかを刺激してくる。観ていて根元的な恐怖を感じた。
右:ミリアム・カーン《人としての私》 2018 年 1 月 1 日と 9 日
油彩、キャンバス
200 × 195 cm
こわい。悪夢を見ているよう。
ミリアム・カーン《無題》
右:ミリアム・カーン《美しいブルー》2017年5月13日
油彩、キャンバス
200×195 cm
2015年のシリア難民をはじめとする欧州難民危機をテーマにした作品。
地中海を彷彿とさせる水色と、力なく海に沈んでいくひとの姿が描かれている。
どの作品もとにかく色がきれい。
三島喜美代
三島喜美代。1932年大阪府生まれ、同地および岐阜県在住。
Eテレの「日曜美術館」に出ていて、初めてその名前を知りました。
直島の作品「もうひとつの再生 2005-N」
出典:https://www.nhk.jp/p/nichibi/ts/3PGYQN55NP/episode/te/J9LKGWVWZ6/
これはなに?!と驚いた。
直島は訪れたことがあるが、こんな巨大な作品があるなんて知らなかった。
「三島喜美代 命がけで遊ぶ」
大阪在住の現代美術家・三島喜美代さん。新聞や空き缶などの「ゴミ」を、焼き物で、本物と区別がつかないほど精巧に作る。しかも50年続けている。なぜそんなことを? 本人曰(いわ)く「ただおもろいから」。そんな独創的で不思議な作品への評価は、今やウナギ登り。88歳にして現役。体力の限界などお構いなし。果敢なる新作作りの現場に密着!
日曜美術館サイト
出典:https://www.nhk.jp/p/nichibi/ts/3PGYQN55NP/episode/te/J9LKGWVWZ6/
三島喜美代氏のスペースは、展示の最後を飾るものでした。
三島喜美代《作品 92-N》1990-1992年
陶にシルクスクリーン印刷
227×490×390 cm
ひー。天井まで届く勢い!
古紙にタウンページも混ざってる。。あるある。。
ん?古紙の山の向こうに見えるのはゴミ箱??
《作品 21-G》2021 年
シルクスクリーン印刷した陶に手彩色、鉄
ひゃー。空き缶の山!
近づいてみる。。すごい。これが焼き物?!
こちらのカゴは紙ゴミ。
ダンボール裂いた部分を見ると、確かにセラミック…。唖然呆然。。
こ、これは。
英字新聞!こんなにたくさん。。
圧倒されるが、でも単体で見ると洒落たイメージ。
これ、オブジェとしてミュージアムショップに並べたら即完売だと思う!
平面の、言ってみれば「普通」のコラージュ作品もいくつか展示されていた。
センスがとても良い、洗練された感覚を持つ美術家という印象。
《作品-R》1965年
新聞、雑誌、アクリル絵具、キャンバス
162 × 130 cm
アナザーエナジー展は「挑戦しつづける力」と副題があるけれど、三島氏の場合は「楽しくて楽しくてやっていたらこうなった」と話していて、「挑む」というスタンスはあまり感じられなかった。本当の芸術家というのはこういう人なのだろうと思った。
そして、番組の中では、残念ながら現在足の具合が良くないが、動けなくなったら仕方がない、今度は現代音楽をやろうと思う、とおっしゃっていました。
驚愕!存在自体に憧れてしまう!
コロナ禍のなか、少々元気が足りない大人のあなたにオススメですよ。
■ お知らせ ■
YouTubeチャンネル始めました!
ストレスの多いこのご時世、少しでもリラックスできますように…。
追記:
2022年1月16日(日)までの会期延長になりました!
会期2021.4.22(木)~
会期中無休開館時間10:00~20:00(最終入館 19:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※当面、時間を短縮して営業いたします。会場森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
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