「日輪の翼」〜やなぎみわステージトレーラープロジェクト

アート
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やなぎみわステージトレーラープロジェクト 『日輪の翼』」を観賞しました。(会期終了)

 

スクリーンショット 2016-08-11 16.46.45
出典:http://www.kaat.jp/d/yanagi_nichirin

 

とても面白かった。
横浜赤レンガ倉庫前広場に停められた、大きなステージトレーラーの上が舞台。
夕暮れ近い空の下、公演はスタートした。

トレーラーは荷台の背がもちあがり、光り輝く舞台が出現する仕様。
中上健次の「日輪の翼」に描かれるオバたちの聖地巡礼の物語。

 

舞台の上では俳優の芝居だけではなく、切れのいいタップダンサーの迫力のステップ、クレーンで空中につり上げられ天空を舞うサーカスのパフォーマンス、妖艶な容姿と仕草で魅せるポールダンサーの演技、「死のう団」なるバンドのノリの良い演奏など、様々なアクトが繰り広げられる。

死の影が漂いながらもひたすら陽気で快楽的。
息もつかせないほどの場面転換。

 

どの登場人物も実に芸達者なのだった。
いま長台詞で滔々と語っていた俳優が、次のシーンでは軽妙にバイオリンを弾いて見せる。
老婆を演じていたひとが、次の幕では一流の三味線曲を奏でている。
パーカッション奏者だと思っていたひとが次のシーンでは舞台に上がり、見事なタップダンスを披露する。たくさんの才能がぶつかり合い火花が散る。

 

物語が終わりに近づくと、ぎらぎらとした光を放っていたステージが段階的に扉を閉じ、ついにはすべて閉まって普通のトレーラーになる。
そうしてそれは次の巡礼地をめざすべく、エンジンをかけ野太いクラクションを鳴らすと、その場から走り去ってしまった。

目の前にあった華やかな喧噪が夢のように消え、観客はその場に置き去りにされる。
照明も落ちた何もない広場を前に、みなしんとしている。
観客席の方がかえって明るいくらいだ。
不思議な感じがした。
何だろう。
演者が去り、今度は観客が演じ手になったような気分。バトンを手渡されたような感じ。

 

きちんとしたホールで見るのではなく、野外での公演(赤レンガ広場の通行人にも音声は届くし舞台も辛うじて見えると思う)の醍醐味なのかな。そして、いまあった世界があとかたもなく消えてしまったことから、自分はほかの観客達とともにたしかにその非日常の場を目撃した、という感慨を持った。
やなぎみわが舞台に据えたポールダンスのポールのことを、天と地をつなぐ御柱に例えていたことも思い出した。
ぼうっといると、わずかな灯りのなかに長身のやなぎみわが立った。
ご挨拶があり、公演はおしまい。

 

やなぎみわ氏の「マイ・グランドマザーズ」シリーズが好きだ。
美術家は最終的に演劇の方に関心が行きやすいのかな。

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
やなぎみわステージトレーラープロジェクト『日輪の翼』
公演期間:2016年06月24日(金)~2016年06月26日(日)
会場:横浜赤レンガ倉庫 イベント広場(野外公演)
原作:中上健次
演出・美術:やなぎみわ
音楽監督:巻上公一
脚本:山﨑なし

【出演者】(五十音順)
<オバ>
重森 三果 (和楽アーティスト)
SYNDI ONDA (歌手)
ななな (クラウン)
檜山 ゆうこ (ボイス・パフォーマー)
南谷 朝子 (俳優)
<若衆>
石蹴 鐘 (サーカス・パフォーマー)
上川路 啓志 (俳優)
辻本 佳 (ダンサー)
西山 宏幸 (俳優)
村岡 哲至 (俳優)
<若い女>
サカトモコ (サーカス・パフォーマー)
藤井 咲有里 (俳優)
MECAV (ポールダンサー)
<楽隊>
Saro (タップミュージシャン)
嶋村 泰 (ギタリスト)

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