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マンダラデザインアートブログのsachiです。
竹橋にある国立近代美術館に「ピーター・ドイグ展」を観に行きました。
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ピーター・ドイグ展に行ってきた!気になる混雑の状況は
「ピーター・ドイグ展」は、当初6月14日までの会期でしたが、コロナの影響で10月11日までに延期されました。
この時期、気になるのは混雑具合です。
いろいろ考慮して平日の昼過ぎに出かけましたが、結果、とても混んでいました。閉幕間近だったからかもしれません。(入場前に並ぶというほどではありませんが)
チケットはすでに持っていたので、入り口にて計器を当てられ手首をぴっとして検温、アルコール消毒。
コロナ以降、大きな展示を観るのは初めてです!
写真撮影もOKだったよ!
《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》 2000-02年 シカゴ美術館蔵
ピーター・ドイグ展 みどころ
ピーター・ドイグは1959年スコットランドのエジンバラ生まれ。
カリブ海の島、トリニダード・トバゴやカナダで青年期を過ごしたということも彼の作品世界に大きな影響を与えています。
1994年にはターナー賞にノミネートされ、テート(ロンドン)、パリ市立近代美術館、スコットランド国立美術館(エジンバラ)、バイエラー財団(バーゼル)、分離派会館(ウィーン)など、世界的に有名な美術館で個展を開催しました。
そして、日本でははじめての個展です。
展示は、以下の三つのパートに分かれていましたが、それぞれのイメージ・醸し出す雰囲気がまったく違っていました。
1. 森の奥へ 1986年〜2002年
ピータードイグがターナー賞にノミネートされた当時(1994)は、デミアン・ハーストに代表されるヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)と言われる作家たちが人気で、派手なインスタレーションがアートシーンに繰り広げられていた。
すでに時代遅れのように見られることもあった「絵画」というジャンルにおいて、新しい地平を真摯に切り開くピータードイグ。そんな彼が評価され始めた頃の作品群。
2. 海辺で 2002年〜
ピータードイグがロンドンからカリブ海のトリニダード・トバゴに移住してからの作品群。
海辺の風景が主なモチーフになり、これまで比較的厚塗りだった作品も薄塗りの油絵具、または水性塗料を用いるようになった。
3. スタジオフィルムクラブ─コミュニティとしてのスタジオフィルムクラブ
ピータードイグが友人と始めた映画の上映会(スタジオフィルムクラブ)のポスターのようなもの。素早く描かれたドローイングの作品群。
過去の名作が上映作品として選ばれており、これらのものは近隣住人に上映会を周知するために掲出しているものだった。
前半は 物語やおとぎ話のイメージ
ふたつ並べて展示されていた湖の作品には、心を奪われた。
深層に訴えてくるような、何というか、ちょっと禍々しい感じ。
《エコー湖》 1998年 テート蔵
絵の中央にパトカーが見える。
湖のほとりで頭に手をやっている男を見ていると
「とりかえしがつかない」
という言葉が自然と浮かんだ。ドキドキしてきた。
右下の水の面に人の姿のようなものが見える。赤黒い水面が不気味。
夜空のイメージも不安を掻き立てる。
《カヌー=湖》 1997-98年 ヤゲオ財団コレクション蔵
カヌーというモチーフは、映画『13日の金曜日』から着想を得たとのことだが、作品はその映画を見ていない人の心にも強い不安のイメージを投げかける。
同時代を生きる人の感性に、不穏な印象を刻みつける作品だと思う。
《ブロッター》 1993年 リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー蔵
入ってすぐのところにあったこちらもよかった。
薄紫に見える水面に映る像や波紋が美しい。
画面分割のバランスが絶妙だなぁ。
少し斜めってる背景の雪面と、縦の線を作る白樺の林。
足元を見ている男の首の角度も心地よい。青いダウンジャケットが可愛らしい。
前景の宙を舞う雪は、絵の具の厚い盛りで描写されていた。
《スキージャケット》 1994年 テート蔵
こちらは、トロントの新聞に掲載された日本のスキーリゾート広告写真を参照して描かれたものなんですって。
そして、自分が一番好きだったのは以下の作品!
《ロードハウス》 1991年 ヤゲオ財団コレクション蔵
可愛らしくおとぎ話のような雰囲気。とにかく色味が好きだった。
遠目に見ると、画面が三分割されて見えるのも好き。
近づいて見ると…。
なんとも可愛らしい……。
お祭りの電灯のようなものがつる下がっているよ!
電柱や電線も、味があるね!
家のかたちや、外壁の色づかいも洒落ている。
作品の説明にはこう書かれていた。
「横長のトリプティック(3つの色の帯のこと)の出発点は、バーネット・ニューマンによる初期の絵画です。そのストライプやジップを分厚い色の塊の間の小さな風景と捉えてみたくなったのです」
具象的なイメージを退けて、抽象的な色面によって崇高さを表そうとしたアメリカの抽象表現主義の画家、バーネット・ニューマンの絵画構造の中に、ドイグは風景を見出し、家や道路のようなありふれた図象を描き込みます。こうした特異なやり方で、彼はモダンアートの別の可能性を引き出そうとしているのです。
美しくも恐ろしい光景《のまれる》
《のまれる》 1990年 ヤゲオ財団コレクション蔵
こちらの作品にははっとさせられた。美しいけど、毒々しい。
1989年のチェルノブイリ原発事故を受けて、そのイメージをもとに描かれたものだそう。
(2015年のクリスティーズ・オークションで、約30億円で落札された作品)
神秘的世界の入り口《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》
《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》 2000-02年 シカゴ美術館蔵
本展覧会のメインビジュアルに使われている作品。
一見、おしゃれでカラフルな印象で、他のドイグ作品と比べるとちょっと様相が違う。似ている作品は他になかった。この雰囲気だけを求めて展示に訪れる人は、きっと肩透かしを食らったように感じると思う。
オーロラが出ているような空が美しい。けどやっぱり不穏(笑)
この砂糖菓子のような塀の模様とおじさん2人のメルヘンな衣装が、この作品をキャッチーに印象づけている。それにしてもやはり、構図がよいなぁと思う。
後半は 精神にくるような生々しい側面も
《ペリカン(スタッグ)》2003年 マイケル ヴェルナー ギャラリー、ニューヨーク/ロンドン蔵
高さ3mもある大きな作品。
怖い絵だと思う。絵の中の人がこっちを見ている。
見入ってしまうが、あまり見続けると心が乱されそうな予感がある。
この人物はペリカンをとってきたところらしい。サイコパス的な何かを感じる。
シルバーのメタリックな絵具の表現するところは、水なのか光なのか。
画家はそのままバケツから流したのだと思う。
《ラペイルーズの壁》 2004年 ニューヨーク近代美術館蔵
こちらの作品は、スタジオフィルムクラブで上演した、小津安二郎「東京物語」の
洗練された静けさを意識したとのこと。
じんとした熱い日差し。くっきりとした影。抜けるような空。夢に見たような懐かしい感じもする。
《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》 2015年 作家蔵
《赤い男(カリプソを歌う)》 2017年 マルグリット・スティード・ホフマン蔵
「スタジオフィルムクラブ」サロンみたいで楽しそう
「東京物語」「座頭市」のほか、「hana-bi」もあります。
それらもまたピータードイグ作品に影響を与えていると思うと、やはり同時代の画家なんだなぁという実感を強くします。
ピーター・ドイグ展 概要
観覧後に見たグッズや図録もよかったです。
自分が行った時には「エコー湖」のポストカードだけがSOLDOUTになっていました。
作品数は多くはありませんでしたが、観覧してよかったと思える展覧会。
会期は残すところもうあと少しです!
会場:東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー
(〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1)
会期:2020年2月26日(水) ー 10月11日(日)
休館日:月曜日(ただし8月10日,9月21日は開館)、8月11日,9月23日
開館時間:
10:00 ー 17:00 金曜・土曜は20:00まで
(入館は閉館30分前まで)
主催:東京国立近代美術館|読売新聞社|ぴあ
特別協賛:ジョージ・エコノム・コレクション|マイケル ヴェルナー ギャラリー、ニューヨーク/ロンドン
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