本と映画

文学

「某」川上弘美のこわく懐かしい世界

「誰でもない」とされる者が、色々な人間に生まれ変わっていくお話。 読み始めは、面白い試みだけど書き方が少し陳腐だなと感じ、川上弘美にしてはありきたりだと途中で投げ出しそうになった。 だが、読み進むにつれてしだいに味わい深くなっていった。 生まれ変わった人間にその前に生きた人生の経験も織り重ねていき(当人に記憶もある)、たとえその人間が生まれたばかりであってもどんどん人間が深化していくような展開。
映像

「VISION 」河瀬直美監督

音楽(効果音)が流れるようなことはほとんどない作品。代わりに、森のざわめきが始終響いている。 その音色にはたいてい大勢のひとの声(のようなもの)が混じっている。それを耳にするだけでなぜか全身に鳥肌が立つ。そして、溢れる光。映し撮っている対象物さえ見えないほどの光量。見ている自分が消えてしまいそうになる感覚のある映像
文学

村田沙耶香の「コンビニ人間」はありきたりな価値観を小気味よく破壊する

日本人がこれがひととして普通、と思っている生き方について、改めて考えさせられる。 ひとは、日本人は、誰もが普通を演じようと懸命になり、生きているだけなのではないか? それは、村八分になりたくないから。
文学

「あひる」今村夏子著を読んで生きるって辛いなぁと思う。

読後感がなんとも言えず寂しい。 人として生きるって、なんて寂しいことなのだろうか、と思った。
アート

「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」展を練馬区立美術館で見てきた!

不吉で不穏なこのムード。何が起こるのだろうと身震いしながらも読むのが止まらない感じ。子どもが次から次へと死ぬなどという残酷な内容なのに、作品自体は詩的で静謐で美しいイメージ。この物語から教訓を引き出そうとすることはきっとあまり意味がない。世界観をそのままに味わうのが良いのでしょう。
アート

話しているのは誰? 現代美術に潜む文学 @国立新美術館

反体制的なメッセージを感じさせるものや、資本主義への疑問、淡々と社会を写し取る写真群など。どれも社会性を帯びた作品ばかりだった。いや、そんな大上段に構えた物言いはそぐわないのかもしれない。なぜならば、彼らが扱っているのは実際、身近なながめや出来事ばかりだから。
アート

21st DOMANI・明日展

「DOMANI・明日展」は、文化庁の支援のもと海外で研修を受けたフレッシュな美術作家たちのショウケース。 びっくりさせられるようなものを見せてくれる芸術家はいないかなーと毎回楽しみに見に行っている。
アート

「天文学と印刷」展@印刷博物館の図録が素晴らしかった!

小石川にある印刷博物館に、「天文学と印刷〜新たな世界像を求めて」展を観に行きました。 何が素晴らしかったって、図録やフライヤーの意匠! 個人的にここ数年でもっとも興奮する美しさだった。
アート

「アジアにめざめたら」東京国立近代美術館

「アジアにめざめたら」@東京国立近代美術館に行きました。
アート

「心をつなぐあたたかな色 柿本幸造の絵本の世界」と『どうぞのいす』

最初の印象はとてつもなくかわいい。やさしい。なつかしい。 そして、おしゃれ! 色もきれいだし、絵本なのに変な表現だけど、洗練されているなぁと思った。 ものすごくデザイン性が高いと思った。
アート

ひとつひとつが夢のように美しい セルゲイ・パラジャーノフ監督「ざくろの色」

「余りにきれいなので泣ける」「ストーリーもセリフもほとんどない。カメラも動かない。聴き慣れない民族音楽が流れ、見たことのないような、鮮やかな色や形が、絵画のように風景から切り取られて、次々と現れては消えて行く。一つひとつが夢のように美しい」
映像

河瀬直美監督作品「あん」

秀逸だったのは、樹木希林演じる徳江がどら焼きのあんを作るシーン。暗くちっぽけな厨房で彼女は、あずきの入った鍋をのぞき込んでいる。その横顔の輪郭だけにカメラのピントは合い、それ以外はまろやかにぼけている。彼女の立つガス台のかたわらにささやかなガラス戸があり、その向こう側には柔らかな春の日差しが広がっている。ほぼ逆光。
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