「某」川上弘美のこわく懐かしい世界

文学
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川上弘美の「」を読んだ。
読書感想メモです。ネタバレあります。

 

「某」川上弘美著

 

私事だが、小説を楽しむ力、落ちているかな?と感じた。
何となくその物語世界に没入できない。
川上自身は以前、自分の小説のことを「うそばなし」と呼んでいたが、この年になるとそれほど多くは残されてはいない自分の時間を、人の語る「うそ」に費やすのが辛いと感じることがあるのだ(笑)

 

小説自体はよかった。
「誰でもない」とされる者が、色々な人間に生まれ変わっていくお話。

読み始めは、面白い試みだけど書き方が少し陳腐だなと感じ、川上弘美にしてはありきたりだと途中で投げ出しそうになった。
だが、読み進むにつれてしだいに味わい深くなっていった。
生まれ変わった人間にその前に生きた人生の経験も織り重ねていき(当人に記憶もある)、たとえその人間が生まれたばかりであってもどんどん人間が深化していくような展開。

これは、どのようなことを示唆するのだろう。
仮に生まれ変わりがあるとして、前世などはすべてリセットした上でひとは生まれてくるけれど、もしも当人に全部記憶があるとしたら。。

…めっちゃ重いなぁ。。
でも経験のストックによりきっと、成長もレバレッジ効果がのぞめるだろう。

 

ひかりとみのりの章あたりから川上弘美の真骨頂である、人も他人もこの世もあの世も、すべての輪郭が曖昧な描写が濃密になっていく。

このこわいような、懐かしいような世界に浸りたくて自分は川上弘美を読む。
装丁も可愛い。おすすめです。

 

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