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マンダラデザインアートブログのsachiです。
高木正勝氏の芸術への取り組み方に、自分は深い敬意を抱いています。
彼の音楽やアートを生み出す姿勢には、心を打たれるような何かがあります。
そういうわけで、彼の作品について何かを書こうとするとしぜんと背筋が伸びます。
適切な言葉を探り、心を込めて書こうと、厳かな気持ちになるのです。
タイ・レイ・タイ・リオ
タイ・レイ・タイ・リオ。
音楽家、高木正勝のアルバムのタイトル。
意味は、日本民族のルーツの一つと言われるポリネシアの言葉
「波のように大きく振れ、小さく振れ」。
これは、松明をふる京都・鞍馬山のお祭りで使われる、
「祭礼祭領(さいれいさいりょう)」
というかけ声の語源とも言われている。
このアルバムには『タイ・レイ・タイ・リオ紬記』という文庫本サイズの神話集がついている。
一曲ごとに、お話が添えられている。
それらはそれぞれの楽曲のイメージから連想されたもので、世界中の神話や民話テキスト、教典などから集められたとのこと。
例えば4曲目の「Lava」。
チベットの「バルド・トゥドル」(死者の書)が添えられている。
それを読みながら聞くと、お経のようにもマントラのようにも聴こえるこの曲のイメージが、限りなく膨らんでいく。
「Tidal」
には、シバイア族やクニバ族の神話が寄せられている。
デリケートな旋律と、その物語がしっくりとくる。
曲の美しさが神話世界によってより深みを増し、テーマ曲がついた神話の方もドラマティックに読める。
立体的な世界観が立ち上がる。
「Elagance of Wild Nature」
彼の楽曲自体が優雅でワイルド。
知的であり、かつ原初的。
(これらの曲を聴いていると、その感動を自分の少ない語彙でもってこうして形容していることじたい、ひどく野暮だとも思う。音楽から受ける情感を言葉に変換することは、自分にはとても難しい。音楽と言葉では位相が違うように思うから)
そしてこのアルバムの中で一番好きなのは
「Omo Haha」
何度聴いても聴きすぎるということはない。
圧倒的な懐かしさを覚え、陶然とする。
地球というこの星まるごと懐かしく、いとおしいー そんな気持ちがこみ上げてくる。
曲に添えられているのは、
「遠い土地に嫁いだ娘の唄」(モンゴル民話)。
離れて暮らす母や父への思いが語られているのだが、この曲を聴いていると、その娘を思う親の気持ちになり、胸が締めつけられるような心地がする。
また、この神話集を編纂した人類学者の石倉敏明氏による、巻末にある解説が素晴らしかった。
神話の思考は、ものごとを大胆かつ謙虚に推理する。
世界中のあらゆる生き物や無生物は、どんなふうに世界を見たり、聞いたり、体験しているのだろう。
それを知るためには、私たちは堅いエゴの殻を破り、人間中心の傲慢な世界の見方を、捨ててしまわなければならない。
世界にやわらかく動いているこの現実を、そのまま体験してみよう。もうひとつの宇宙像 ―「タイ・レイ・タイ・リオ紬記解説」より 石倉敏明
高木正勝℗ 田口晴香(vo) ヤドランカ(vo) 松平敬(vo) 熊澤洋子(violin) 金子鉄心(uilleann pipes) ヤマカミヒトミ(fl) OLAibi(per) 佐藤直子(per) 沢田穣治(cb)
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