【残像日録】割れたメスシリンダー

残像日録
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日々の残像を、ゆるゆるメモします。

 

中学生くらいの女の子が本を読みながら歩いているのを見て、自分がそのくらいの歳だった頃のことをなんとなく思い出した。

 

自分は、理科室が好きな子どもだった。

骸骨の骨格模型や、液体につけた不思議な標本。
目盛りのついた透明のビーカーやフラスコ。試験管。
薬瓶も魅力的だった。何かをすりつぶす、乳鉢なんていうのもあったっけ。
そしてプレパラート!
顕微鏡で観察する液体などをスライド(ガラス板)に置き、薄くて小さいカバーグラスを注意深くピンセットで置くときのドキドキ感。

当時、自分のクラスには落ち着きのない男子が多く、理科室の授業のとき班の中にひとりでもそういう子がいると自分はハラハラした。何度注意しても、友達同士じゃれ合ったりしていて危なっかしいったらない。
実際に、彼らはふざけていて試験管を落としたり、手荒に扱ってビーカーを割ってしまうこともあった。

見かねた理科の先生は、あるとき高らかに宣言した。

「もし次に何かを壊したら、その時点で授業は中止。教室に帰り、全員で反省タイムです」

理科室の中が静まりかえった。

自分はちょっとほっとした。これで男子達もきちんとやってくれるだろう。

次の授業のとき、実験器具のひとつとして用意されたのがメスシリンダーだった。
すらりと背の高いこのガラス器具は、特に気をつけて扱わなくてはならない。

 

メスシリンダー
ガラス実験器具の王者、メスシリンダー!
出典:モノタロウ

 

先生による、実験内容の説明を受ける間も自分はわくわくしていた。
メスシリンダーのあの、すっと伸びた胴の部分に早く触れたくて仕方なかった。
「実験を始めてください」
先生の声を聞くやいなや、自分は手を伸ばした。
思いもかけず、指先に当たってそれはぐらりとした。
「あっ」自分は声をあげた。あわててつかもうとしたのがいけなかった。メスシリンダーは机から落ち、大きな音をたてて砕けた。

あたりが静まり返った。
驚いた顔の先生がこっちを見ている。口があんぐり開いていた。
長い時間が流れた、ように感じた。

「実験は中止です。みんな教室に戻るように」

ショックが大き過ぎたからか、それから先の記憶があまりないのだけど、教室での反省タイムはいたたまれない気持ちマックスだったろうと思う、普通に考えて。

後日、職員室に行ったとき、理科の先生がにこにこしながら「〇〇(自分の名前)は純粋だからなー」と言ったことを覚えている。
今考えてもあんまり意味はわからないが(笑)

あれも確か暑い夏のことでした。

 

すべては通り過ぎてゆく。

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