わたし達に問いかける「ユージーン・スタジオ 新しい海」展 @東京都現代美術館

ユージーンスタジオ 新しい海アート
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東京都現代美術館で開催中の「ユージーン・スタジオ 新しい海」展を観てきました。

作品と向かい合うことでインスピレーションを刺激され、何かしら考えたくなる展示は久しぶりです。

平成生まれの若い作家ですが、自らの思索やひらめきをさまざまな素材や手法を用いて表現し、果敢に作品を生み出し続けていることがわかります。

 

ユージーンスタジオ 新しい海

東京都現代美術館では、現在、国際的評価が高まっている新進気鋭の現代アーティスト、EUGENE STUDIO(ユージーン・スタジオ)の国内美術館における初個展を開催いたします。ユージーン・スタジオは寒川裕人(Eugene Kangawa、1989年アメリカ生まれ)による日本を拠点とするアーティストスタジオで、平成生まれの作家としては当館初となる個展です。

出展:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/the-eugene-studio/

 

撮影OKでしたので写真とともにレポートいたします。

 

〈ホワイトペインティング〉シリーズ

ユージーンスタジオ 新しい海
〈ホワイトペインティング〉シリーズ、2017年、カンヴァス、160 x 160cm

 

何も描かれていないように見えるけど、この上には人々の接吻の跡が無数に重なっている。

Juliette,Sandra,Mitch……。
タイトルはこのキャンバスに口付けたひと達の名前。
アメリカやメキシコ、スペインやイタリアなど世界のさまざまな都市で人々に声をかけながら制作されたという。

シンプルでミニマムな見た目でありながら実は深い意味を持つ作品は魅力的です。

 


〈ホワイトペインティング〉より ロサンゼルスでの風景、2017年
出典:https://mot-solo-aftertherainbow.the-eugene-studio.com

 

さらにこの作品には、おそらく作家も意図していなかった意味もこめられた。

コロナ禍の今、感染予防の観点からこういった制作過程は困難であることに、観る者は気づくことになる。

2017年には抵抗もなくできていたことが、たった数年後には難しくなる。世界の成り立ちの危うさに観る者は思いを馳せるだろう。

 

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海庭(Critical)

ユージーンスタジオ 新しい海
《海庭》2021年、水、砂、鏡、サイズ可変

 

ユージーンスタジオ 新しい海

 

「新しい海」展の象徴的作品である、大型インタレーション。
英題はCritical(物と物の境い目)。

ひたひたと微かに音を立てる人工的な海。静謐な印象だった。

それにしても館内のあんな広いスペースに水をはることができるなんて、びっくりした。
いつも来ている美術館なので、ちょっとわくわくするような新鮮な驚きがあった。

 

 

私にはすべては光り輝いて映る

ユージーンスタジオ 新しい海
上:《私にはすべては光り輝いて映る》より「黄色い花畑のドローイング」2021年、真鍮、油彩
下:《あるスポーツ史家の部屋と夢より#連弾》2014年、スチール、木、油彩/木、真鍮、ガラス

 

手前の作品は、
「スポーツが近代化され、制度化される以前の本来持っていたグルーヴ感や刻々と変化する共感といった目に見えず言語化しがたい特性を、盤上のスポーツと称されるチェス、原始的な打楽器から派生したドラムと言う異なる要素によって視覚化を試みている」
とのこと(作品解説より)。

作品全体のたたずまいがカッコよかった。

 

〈レインボーペイティング〉シリーズ

ユージーンスタジオ 新しい海
〈レインボーペイティング〉シリーズ、2021年、キャンバスに油彩

 

左の作品には「人の海に」、右の作品には「人の世」という副題がつけられている。

無数の点描で、遠目には淡いグラデーションに見える。
作家は、多様な色の個々の点をひとりの「人」とし、「群像のポートレート」を作り上げた。

 

 

ユージーンスタジオ 新しい海

 

近くで見るとこんな感じ。油彩。

 

〈レインボーペインティング〉シリーズは8点展示されていたが、これらはみな2021年の作品だった。
コロナ禍での鬱屈した世の中の空気が、作品表現にも影響しているのかあるいはしていないのか、聞いてみたくなった。

 

 

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私は存在するだけで光と影がある、この世界のすべて

ユージーンスタジオ 新しい海
《私は存在するだけで光と影がある》より、2021年、紙、染料

 

翠色のグラデーションの美しいこの作品は、変わった技法で描かれている。

画面に水性染料を均一に塗り、それを折り曲げて多角柱にする。それを数ヶ月間太陽光に晒すと、光がよく当たっている部分は退色が進み、影の部分は色が保たれ、それで色の差が出てくる。

 

絵画と立体、日焼けという写真の原始的な要素が一体となって、その場所、ときどきの太陽とともにつくる。(作家のことば)

 

紫外線とのコラボレーション。
作法が本当に興味深いし、ビジュアル的に美しい作品だ。

そして、無限の可能性がある。
多角柱に折らず、円柱とかならどうなるのかな。あるいは波型…..。

 

 

ユージーンスタジオ 新しい海
《この世界のすべて》

1面体から120面体のサイコロから成る。

この場で転がされた状態で置かれているとのこと。

サイコロは日々振られ、二度と同じ状態になることはない、という作品。

 

善悪の荒野

作家は2017年制作当時、この約50年前に描かれた人類誕生以前と未来の物語を破壊することから、現代社会における地続きの私たちの未来を再度想起するきっかけを与えようとした。(作品解説より)

 

ユージーンスタジオ 新しい海《善悪の荒野》(左:全体 右:部分)2017年、陶器、鉄、木、ガラス、灰、他、240 x 873 x 300 cm

 

スタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』のラスト近くにボーマン船長が行き着く、真っ白で硬質な部屋。
映画公開当時から現在まで色々な意味の解釈がなされている、サイケデリックで怖くて魅力的な空間である。

 

ユージーンスタジオ 新しい海
出典:https://www.club-typhoon.com/archives/2018/09/29/2001aspaceodyssey.html

 

このSF映画の金字塔とも言われる映画のクライマックスシーンが、めちゃくちゃに破壊された作品(笑)

 

ユージーンスタジオ 新しい海

 

キューブリック・リスペクトの自分にとっては少々ショッキングでもあった。

だが、ほかならぬキューブリック自身がもしこの作品を見たら、小気味良くながめて「いいね!」と言うのではないか、と何となく思ったのだった。

 

ユージーンスタジオ 新しい海
ボーマンがお食事していたテーブルも、灰にまみれ核戦争後のよう……。

 

ユージーン・スタジオの作品の印象は、どれも端正。
表現としての装飾を極限まで削いだかたちをとっているように見える。
禅的でもあるとも言える。

そしてそれは、美しいフォーマットで提示される現代社会への(あるいはそこに生きるわたし達への)問いかけだ。

『2001年宇宙の旅』でキューブリックが描いたモノリスという存在とも、どこか通じるものがあると感じた。

 

ユージーン・スタジオ 新しい海 EUGENE STUDIO After the rainbow
会期: 2021年11月20日(土)-2022年2月23日(水・祝)
会場: 東京都現代美術館 企画展示室 地下2F

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