村岡魯檀 陶展 アンティーク・モダンの世界
本と映画
小池真理子の『ストロベリー・フィールズ』
主人公の女医・夏子を慕う平岡旬が腹を切って自殺未遂 をした。 11月25日の第369話。 三島由紀夫が割腹自殺をした憂国忌、その日である。 それはきっと、小池の三島へのオマージュ。 密やかだけど、カッコいいな。
時空を超えた最上級の愛情表現『シズコさん』佐野洋子著
壮絶であった。すべてさらけ出して、まっ裸になって自分と母親、そして家族のことを描き出している。全編にわたり、死ぬ前に何が何でも描いておかなくては、というような気迫にあふれている。とくに母親が呆けてからの最終章は凄まじかった。
極彩色の世界観『パコと魔法の絵本』中島哲也監督 が好き
オープニングからエンディングまでひたすら目の覚めるような極彩色。好きな人にはたまらない色彩の洪水。前作よりもCGを多く使っているが、これがまた実写とうまく共存しているのだ。CGの色味のどぎつさと同じくらい、実写も毒々しい色色色。それでも全体としてきちんとしたまとまりを見せている。
是枝裕和監督『歩いても歩いても』で描かれる実家というしがらみ
ある年代以上ならば、かならず思い当たることのある「実家」「血のつながり」に対する重い感情や、よきにつけ悪しきにつけ逃れることのできない、しがらみといったものを丹念に描いた作品。
『重力ピエロ』伊坂幸太郎著
『死神の精度』を読んだときは、新しい才能との出会いに驚愕した。 あちらこちらに仕掛けられた伏線、そしてそれらの見事な展開。 この人の製作ノートを見てみたい、SE出身なのできっと精巧なフローチャートのような形式なのではないか、と考えたりした。
『バベル』/ アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督
場所と時間軸がめまぐるしく入替わる手法をとり(編集の若干の粗さは感じた)、立体的な世界観を演出する。前作の『21グラム』も同様だった。さまざまな事件や悲劇は起こるけれども、いわゆる悪人は一人も出てこない。
『死後体験』坂本政道 著
著者の死に対する強い好奇心から始まった、死への探究の旅。 モンロー研究所の音響技法・ヘミシンクを用いた体験の報告では、死後の世界のようす、死者の意識のありよう、ハイヤー・セルフやトータル・セルフとの出会いなどが詳細に記されている。
『AMEBIC』金原ひとみ著
彼女に関しては文学の資質はもちろん、その美的感覚に粋なものを感じる。主題そのもののチョイス、物語の展開の仕方、文章のリズム、言葉の選び方、さらにはちょっとした諧謔味などに小手先だけでは果たせない才能を感じてしまう。ことの運び方がスマートなのだ。読む快感を感じさせるのは、町田康と通ずるのかも。
煌びやかな世界観『嫌われ松子の一生』中島哲也監督 が素晴らしい
ストーリーの緩急も気持ちよかった。終盤の松子の死以降の映像は秀逸である。 松子のおいが踏み混んだ彼女の臨死の境地を、我々も共に体感する。カメラワークがすごい。まるで魂になってあちらこちらに瞬間移動するように、時間も空間も超越して跳んでいく。景色、情景も既視感を感じるような色味で成り立っている。浮遊感は延々と続く。
銀幕の残像
静かなたたずまいの奥に広がる、気が遠くなるほど豊かな世界。 小川洋子の小説に流れる雰囲気を、きっと忠実に再現している のだろう。 原作、まだ読んでないけど。 宇宙の根源的な真理みたいなものを小説で描くのが夢だ、というようなことを、彼女は以前どこかで書いていた。 今回映画を見終わった後に、それを思い出した。