ご訪問いただきありがとうございます。
マンダラデザインアートブログのsachiです。
5月に「上野リチ ウィーンから来たデザイン・ファンタジー展」を観に三菱一号館美術館に行ってきました。
19世紀ウィーン分離派の芸術に興味がありますが、同時代の上野リチという女性デザイナーのことは知りませんでした。
当時のウィーンと日本をつなぐ、彼女の存在を知ることができてよかったです。
本展示は、上野リチの世界ではじめての包括的回顧展とのことでした。
「ウィーン生まれのカワイイです。」
美術展フライヤーのキャッチコピーに「カワイイ」使っちゃうんだ……笑
でも本当にどの作品も愛らしいです。
ウィーン文化の中心から京都に渡った上野リチ
フェリーチェ・リックス(後の上野リチ・リックス)は、ウィーン工芸学校においてウィーン工房のヨーゼフ・ホフマンらに師事、才能を開花させます。卒業後は同工房に入り、テキスタイルデザイン等を手がけました。
(中略)リチは京都出身の建築家・上野伊三郎と出会って結婚、2つの都市を往復しながら、ウィーン工房所属デザイナーとして活動を続けます。
出典:上野リチ ウィーンから来たデザイン・ファンタジー展フライヤー
ポートレート:上野リチ・リックス 1930年代 京都国立近代美術館蔵
出典:https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/24714
1917年、上野リチはウィーン工芸学校を卒業後、ヨーゼフ・ホフマンに誘われてウィーン工房に入りました。以後、精力的な創作活動に打ち込みます。
1925年には、ホフマンの建築設計事務所に勤務していた上野伊三郎と結婚。
これを機に来日、ウィーンと京都の二都市を行き来しながら、引き続きウィーン工房の一員として壁紙やテキスタイルなどの日用品や室内装飾を手がけました。
上野リチ・リックス《イースター用ボンボン容れのデザイン(2)》 1925-35年頃、京都国立近代美術館蔵
出典:https://www.momak.go.jp/wp-content/uploads/2021/08/444_press-2.pdf
上野リチ・リックス 《プリント服地[野菜]》 1955年頃[1987年再製作]、京都国立近代美術館蔵
出典:https://www.momak.go.jp/wp-content/uploads/2021/08/444_press-2.pdf
上野リチ・リックス《ウィーン工房テキスタイル:クレムリン》1929、島根県立石見美術館蔵
出典:https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/24714
色鮮やかで多彩なデザイン、かつモチーフが可愛らしいです。
リチの才能を育んだウィーン工房
リチの所属したウィーン工房は、グスタフ・クリムトやオットー・ヴァーグナーで知られる「ウィーン分離派」から派生したデザイン集団です。
本展示では、分離派のポスターや作品もたくさん観られました。
ウィーン分離派のメンバー
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/ウィーン分離派
また、当時のウィーンでひとびとの注目を集めていたのが、日本の美術・工芸品。
なかでも、日本の染め型紙がデザイン分野で参照されていました。
それら型紙の展示もありました。
型紙については当ブログでも以前、別の展示について書きました↓
MAK―オーストリア応用芸術博物館には、8,000もの日本の型紙の所蔵があることを本展示で知りました。
オーストリア応用芸術博物館ロビーの階段。格調高く、美しかった。 ©️Mandala Design & Chemicals
(MAKについてはウィーン訪問記に書きました↓)
個人的に憧れの、コロマン・モーザー『ディ・クヴェレ(泉)』も展示されてしました。
(コロマン・モーザーはヨーゼフ・ホフマンとともにウィーン工房を立ち上げたデザイナー)
コロマン・モーザー『ディ・クヴェレ(泉)』。こちらは目黒美術館で展示されていたものです。
これらの投稿↑で、展示されていたウィーン分離派作品の多くが京都国立近代美術館蔵であることに驚いたと記しましたが、上野リチが京都にいたこととそれは無関係ではないだろう、と今回思いました。
上野リチは1951〜1963年、京都市立美術大学(現 京都市立芸術大学)で教鞭を執り、中井貞次氏をはじめ優秀なデザイナーを育成しました。
巡回元の京都国立近代美術館のフライヤーがとても充実していて、かつ素晴らしいデザインでした。
中身はこんな感じ↓。
日本と当時のウィーン文化との関係をつなぐ、上野リチの存在を知ることができ、有意義な時間を過ごすことができました!
会期:2022年2⽉18⽇(⾦) ~ 5⽉15⽇(⽇)*展⽰替えあり
会場:三菱一号館美術館
特別協力:MAK―オーストリア応用芸術博物館、ウィーン
コメント