ご訪問いただきありがとうございます。
マンダラデザインアートブログのsachiです。
「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」を観に森美術館に行きました。
19世紀から20世紀にかけて、ヨーロッパでは数学、機械工学、生物学、地質学や考古学の探求の中で「シンプルなかたち」の美学が再認識され、工業製品や建築のデザインなどに多大な影響を与えました。同様に、その品格ある魅力は多くのアーティスト達を魅了し、近代美術の多数の名作を生み出しました。
一方、このような単純で美しい「シンプルなかたち」は、自然の中や、世界各国のプリミティブアート、民俗芸術、伝統文化の中にも、数多く見出すことができます。日本においては、工芸品や茶道具、仏像や禅画などに同様の美学が体現されています。
出典:森美術館公式サイト
シンプルという言葉は、禅や侘び寂びなどを連想させる。
大好きな世界観だ。
では自分は、どうしてそこに美や快を感じたりするのだろう。
そんなことがわかるといいなと思いながら鑑賞しました。
Contents
杉本博司《スペリオル湖、キャスケイド川》
杉本博司《スペリオル湖、キャスケイド川》 1995年
画像出展 http://www.fashionsnap.com/news/2014-12-19/morimuseum-150425/
様々な芸術分野で活躍する杉本博司の撮ったスペリオル湖。
無彩色のグラデーションが静謐さを感じさせ、見る者の心は水平線辺りに吸い込まれていく。
そうしてそれぞれの内面との対話は自然と始まる。
作品がシンプルであればあるほど、自らに向かい合うことになるのはなぜだろう。
湖を撮った写真なのだけど、あの世の気配がする。
岡田紅陽《神韻霊峰 七面山》
岡田紅陽《神韻霊峰 七面山》 1943年
画像出展 http://artscape.jp/focus/10010775_1635.html
岡田紅陽という写真家ははじめて知った。富士山を多く撮っているらしい。
山頂だけが陽に照らされているこの一枚。究極のシンボリズム。
照らされているのは自分のこころのどこかだ。身震いした。
こういう現象をひとは神というのだと思う。
神とは現象である。そう思った。
ヴォルフガング・ティルマンス
ヴォルフガング・ティルマンス《フライシュヴィマー(自由な泳ぎ手) 》 2012年(画像は同じ手法の別作品)
画像出展 http://arcobloggers.com/
ドイツ出身の写真家。こちらはカメラを使わずに暗室で作り上げた作品。
具材を液体に流して偶然(=自然の摂理)に任せたら、シンプルで一番美しい形が現れた、という。
杉本博司の写真を見て、作品がシンプルであるほど自分に向かい合うものなのか…と知ったけど、こちらのシンプルでは世界の成り立ちにも向かい合ってしまった気がした。
オラファー・エリアソン《丸い虹》
オラファー・エリアソン《丸い虹》2005年
こちらのインスタレーションは写真撮影OK。
静かな作品だった。
今見ている眺めはもう先程とは違う。ゆっくりとだが絶え間なく変化する自然現象に立ち合う気分だった。あるべきものがきちんと機能する美しさ。そんなことを思った。
大巻伸嗣《リミナル・エアー スペース-タイム》
大巻伸嗣《リミナル・エアー スペース-タイム》2015年
こちらのインスタレーションも写真撮影OK。
白昼夢のような作品だった。
風を受け、空気のように軽い紗が東京の天空をバックにゆっくりと舞う。
薄い布がまるでスローモーションのように宙を泳ぐ。
天女の羽衣とはこんなふうか。
眺めているとうたた寝しそうなスピードだ。
時の流れも吹けば飛ぶような軽さになった。
カールステン・ニコライ《アンチ》
カールステン・ニコライ《アンチ》2004年
画像出展 http://www.mori.art.museum/
スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』に登場する黒いモノリスを彷彿とさせる作品。
巨大な黒い多面体の、ある面のどこかに触れると低周波というか振動音が鳴る。
さわると反応する、というのが原初的で面白かった。
われもわれもと触っている観客のヒト達が『2001年宇宙の旅』の最初のシーンの猿みたいだった。その光景自体が作品、というのが作者の目論見なのかな。
その他、長次郎の《太夫黒》(黒樂茶碗)や仙厓《円相図》など、日本の伝統的なものの展示もあり、見応えがありました。
会 期: 2015年4月25日(土)-7月5日(日)
会 場: 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
主 催: 森美術館
ポンピドゥー・センター・メス
特別共催: エルメス財団
コメント