ご訪問いただきありがとうございます。
マンダラデザインアートブログのsachiです。
「野口里佳 不思議な力」展と、「見るは触れる」展を観に、東京都写真美術館に行きました。
「野口里佳 不思議な力」展
野口里佳は1995年「写真3.3㎡(ひとつぼ)展」と1996年「写真新世紀」展でのグランプリ受賞以降、〈フジヤマ〉(1997年–)、〈飛ぶ夢を見た〉(2003年)、〈太陽〉(2005–08年)、〈夜の星へ〉(2014-15年)などの写真・映像作品を国内外の展覧会で発表し、国際的にも高い評価を受けている写真家です。野口はこれまでに、水中や高地、宇宙といった未知の領域と人間との関わりをテーマにした作品を手がけてきました。近年では、日常や周囲に満ちる無数の小さな謎の探求を通して、見るものの感覚や想像を解き放つような表現を追求しています。
「表面張力によって、紙のコースターが逆さまにしたコップに張りつき、中の水が落下しない」
「生卵がコップに入った水の真ん中ぐらいで、沈まず、また浮き上がりもせずに静止している」
〜 パンフレットより
幼い頃に夢中になった化学実験のような構図が、詩的なイメージの美しい写真として並んでいます。
「スプーンを磁石でこすり、金属に本来備わっているN極/S極を整えて、磁石に変化させる」
〜 パンフレットより
そんなこと可能なのね。
愛らしい、きれいな写真……。
角度を変えると、色を変える光のプリズム。
いつまでも見ていられるほど今も惹かれる。
この三連作が一番好きだった。
ちょっと川内倫子と印象が似ている写真家だと感じました。
2022.10.7(金)—2023.1.22(日)
開催期間:2022年10月7日(金)~2023年1月22日(日)
見るは触れる 日本の新進作家 vol.19
誰もが気軽に写真を撮り、気安く発表できるこの時代。
写真や映像の可能性に果敢に挑戦している作家達の展示を見て、多くの刺激を受けました。
水木塁
水木塁 《雑草のポートレートおよび都市の地質学》2022年
澤田 華
澤田 華《漂うビデオ(水槽、リュミエール兄弟、映像の角)》2022年
多和田有希
5人の「新進作家」の中で一番興味深いと思ったのが多和田有希の作品だった。
多和田は写真プリントを削る・燃やす、といった方法を用い作品を制作してきました。一見するとレース状・網目状の造形物である作品は、写真の一部分が燃やし出され、成立していることがわかります。写真は、立体的で、生き物のように有機的な存在として現れます。
多和田の制作のプロセスは、作家が対峙した現実の問題を自分なりに消化し、他者に開いていくための時間であり、作品はその営為の集積であり、痕跡といえます。写真が持つ、目で見て、手で触れ、削ったり燃やしたりできるという物理的な特性と、私たちの記憶を補完する記録装置であるという精神的な特性の両方が、作品の拠り所とされています。
〜 パンフレットより
多和田有希 «lachrymatory» 2021年
多和田氏にとって写真とは現実により深い次元で分け入っていくツールで、写真による制作は現実に直面していく行為だと捉えている、とのこと。
多和田有希 «Family Ritual» 2022年
はりめぐらされた、ひとの血管のようで少しグロテスクな印象だが、繊細で魅力的な作品。
自分の家族の写真などを燃やしてコラージュしている。
多和田有希 «I am in You» 2018年
紙の写真を素材にして、このような創造的な作品を作る人を初めて見た。
改めて写真という媒体の可能性を感じた。
デジタルカメラが出る以前の、フィルムや印画紙が高価だった頃には想像もつかなかった作品だと思う。
面白いな。写真で工作。ちょっとやってみたくなった。
永田康祐
永田康祐 《Theseus》2022年
この作品には、フォトショップの「スポット修復ブラシツール」が使われている。
写真の中で何かを消したい時やある部分を別のものに置き換えたい時などに便利に使われるツールだ。
AIで作った人の顔や、ありそうで実際には存在しない風景の写真、などを現在のわたしたちはネットで多く目にするようになっているが、この作品のように一枚の大きなプリントで準バーチャルを見せられると、意識の中でちょっとした混乱が起こるように感じ、それが面白かった。
永田康祐 《オーディオ・ガイド》2019-2022年
岩井 優
岩井 優 《経験的空模様 #1》(Control Diariesより) 2020年
こちらも美しいインスタレーションだった。
写真という古くからのメディアも、着想や創造性で新しい見せ方が可能だ、と感じさせる素晴らしい展示だったと思います。
開催期間:2022年9月2日(金)~12月11日(日)
出品作家:水木 塁、澤田 華、多和田有希、永田康祐、岩井 優
コメント