景観を壊すとされる電線・電柱の見方激変!「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」展 @練馬区立美術館

電線絵画アート
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「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」を観に練馬区立美術館に行って来ました。

 

電線絵画
画像出典:https://www.tokyoartbeat.com/event/2021/5381

 

街に縦横無尽に走る電線は美的景観を損ねるものと忌み嫌われ、誰しもが地中化されスッキリと見通しのよい青空広がる街並みに憧れを抱くことは否めません。しかし、そうした雑然感は私たちにとっては幼いころから慣れ親しんだ故郷や都市の飾らない、そのままの風景であり、ノスタルジーと共に刻み込まれている景観でありましょう。
この展覧会は明治初期から現代に至るまでの電線、電柱が果たした役割と各時代ごとに絵画化された作品の意図を検証し、読み解いていこうとするものです。

出典:https://www.neribun.or.jp/museum.html

 

おもしろかった。

この展示を見て、自分の電線や電柱に対する印象が本当に変わってしまった。

これまでは、写真を撮っていてもなるべくそれらが入らないようにと立ち位置を決め、カメラを構えていた自分がいたが、構図の中の調和するところに電線や電柱の直線が位置しているのであれば、それはそれでまた味があるな、と思うようになった。

しかしよくもまあ、電線が描かれた絵画をこんなに集めたものだ。企画にも何年もの時間がかかったとのこと。

 

電線絵画

 

作品は文明開化の頃から現在までの歴史に沿って、順に展示されていた。

日本最古の電線絵画(「ペリー献上電信機実験当時の写生画」明治初期)を始まりとして、まだ電気の通ってない電信だけの電信柱~電気のある華やかな誇りある暮らし~電柱のある都市の景観、と電気の普及とともに街が発展し、人々の暮らしが変わっていく様子がわかる流れになっていた。

 

 

電線絵画
小林幾英 新よし原仲之町満花の図 1890(明治22) 浅井コレクション
画像出典:https://bijutsutecho.com/exhibitions/7164

 

「災害と戦争」の章では、傾く電柱や切れた電線が描かれていた。

児島善三郎の板橋の電線風景を描いた油彩の色が美しく、とてもよかった。

 

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最後の章の現役若手の作家による「新・電線風景」も面白かった。

山口晃はしばしば電柱をモチーフとした作品を描いているとのこと。

 

 

電線絵画

山口晃 演説電柱 2012 個人蔵 ©️ YAMAGUCHI Akira Courtesy of Mizuma Art Gallery
画像出典:https://bijutsutecho.com/exhibitions/7164

 

 

モーニングに連載された「趣都」の原稿の展示も。さすがに絵がうまい(当然!)。

また、阪本トクロウの「呼吸(電線)」という作品。
写実なのだけど、抽象画やデザイン画のようで素敵だった。

 

ところで日本は電柱や電線のないヨーロッパの都市に比べてごちゃごちゃとして美しくない、とよく言われる。地中に埋めてしまうという案もある。

 

椹木野衣氏が、「電線絵画展」に寄せた美術評で興味深いことを書いていた(東京新聞)。

(地中化案に言及して・前略)失われた民家のように、電線や電柱こそが原郷であったと惜しまれることだって大いにありうる。
絵画に限らない。本展では扱われていないが、目線をアニメに移しても、電線・電柱は私たちの暮らす日常を日常たらしめる要素として欠かせない意味を持つ。平成の古典として評価の確立した『新世紀エヴァンゲリオン』など最たるものだろう。

 

これを読んで、電柱や電線は、欧州の人の目にはどう映っているのだろうか、と思った。
(クールに見えていたりして?)

 


こちらは自分が撮った電柱風景。江川海岸の海中電柱。参考写真 笑

 

 

作品リストに書かれていたのだが、電線には

● 電気を遠くに送る「送電線」

● 家庭などに電気を配る「配電線」

● 電信を送る「電信線」

があるとのこと。
それらをあわせて「架空線」と呼ぶことも初めて知った。

 

「架空の線?むしろ実線なのでは?」

そう思ったが、「架空」には以下のふたつの意味があるそうだ。

・空中にかけわたすこと。 「―ケーブル」
・事実に基づかず、想像で作ること。 「―の人物」

なるほど。

図録を購入しようか迷ったが、ネットでも購入可能だそうです。

 

東京オリンピック・パラリンピック開催にあたり、東京は大規模な無電線化が進められています。見通しのよい街並みが後世に記憶される景色になっていくのでしょうか……。電線が縦横無尽に走る街の雑然感は、私たちにとっては幼い頃から慣れ親しんだ故郷や都市の飾らないそのままの風景であり、ノスタルジーとともに刻み込まれた景観です。(中略)
本書は、明治初期から現代に至るまで、晴れやかな近代化の象徴で、“東京”が拡大していく証で、モダン都市のシンボルであった電線、電信柱、架線が描かれた作品だけを集めた、とてもユニークな作品集です。マニア垂涎の碍子も美術作品として登場します。

 

「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」
会 期 2月28日(日)~4月18日(日)
会 場 練馬区立美術館(公益財団法人練馬区文化振興協会)

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