インド哲学を想起させる 小川洋子著「ブラフマンの埋葬」
物語のなかで「僕」が飼っている生き物の名前は「ブラフマン」。自分が連想したのは、ブラフマンとアートマンでした。ブラフマン(梵)は、インド哲学における宇宙を支配する原理で、アートマン(我)は個人を支配する原理。これらが同一であることを知ることが、 古代インドにおけるヴェーダの究極の悟り=梵我一如(ぼんがいちにょ)です。そして、「僕」が管理人を務める「創作者の家」に住む創作者たち。作家、詩人、哲学者、画家、音楽家、舞踏家...と色々で、彼らが「アートマン」という位置付けなのではないか?と感じました。一様に我が強いように見える彼らに比して、「僕」や彼の飼う「ブラフマン」はその対極にいるように見えました。