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マンダラデザインアートブログのsachiです。
リニューアル・オープンした東京都写真美術館に「杉本博司 ロスト・ヒューマン」展を観に行きました。
杉本博司は1970年代からニューヨークを拠点とし、〈ジオラマ〉〈劇場〉〈海景〉などの大型カメラを用いた精緻な写真表現で国際的に高い評価を得ているアーティストです。近年は歴史をテーマにした論考に基づく展覧会や、国内外の建築作品を手がけるなど、現代美術や建築、デザイン界等にも多大な影響を与えています。
本展覧会では人類と文明の終焉という壮大なテーマを掲げ、世界初発表となる新シリーズ<廃墟劇場>に加え、本邦初公開<今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない>、新インスタレーション<仏の海>の3シリーズを2フロアに渡って展示し、作家の世界観、歴史観に迫ります。
出典:(アイキャッチもお借りしました)
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2565.html
とてもメッセージ性の高い展覧会だった。
<今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない>
は、我々の文明が終わる33のシナリオで構成されている。
建築家、養蜂家、軍国主義者、宇宙飛行士、コメディアン。
あらゆる職業者の口から語られる、「今日、世界は死んだ。もしかすると昨日かもしれない。…」から始まる、この文明の終焉を告げる文章。
世界の終わり方の33通りのかたちが、それにまつわる杉本氏の作品や関連のオブジェや古道具や歴史的資料とともに提示されている。
©Sugimoto Studio キャンベル・スープ缶 2014年 キャンベル・スープ缶用棚 年代不詳
「今日、世界は死んだ。もしかすると昨日かもしれない。後期資本主義時代に世界が入ると、アートは金融投機商品として、株や国債よりも高利回りとなり人気が沸騰した。若者達はみなアーティストになりたがり、作品の売れない大量のアーティスト難民が出現した。ある日突然、アンディー・ウォーホルの相場が暴落した。キャンベルスープ缶の絵は本物のスープ缶より安くなってしまった、そして世界金融恐慌が始まった。瞬く間に世界金融市場は崩壊し、世界は滅んでしまった。アートが世界滅亡の引き金を引いた事に誇りを持って私は死ぬ。世界はアートによって始まったのだから、アートが終わらせるのが筋だろう。」
〜コンテンポラリー・アーティストによる文章
出典:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2565.html
なお、物語のテキストは杉本氏が練り、彼が選んだ各界の著名人による肉筆で綴られている。
読み易さなどの利便性が求められた結果として活字が発明され、コンピューターへと進んだが、その流れとともに肉(筆)に宿っていた魂は隠されてしまった。
文明が終わるときこそ、その始原の姿が現れるのであり、よって文明の終わりの物語は肉筆で書かれなければならない。そう杉本氏は言う。
「人間の文明なんて自然の摂理の中では、あだ花のようなもの。人類って何なんだという問い掛けがある」
と杉本氏は言う。
写真家としての印象が強かったけど、今回の展示に接し、杉本博司氏は優れた美術家であると同時に現代の思想家でもある、と思いました。
追記:
小田原にある「江之浦測候所」も行ってみたいです。
訪れることができたらレポートします!
↓訪れました!(2023年追記)
「杉本博司 ロスト・ヒューマン」展
開催期間:2016年9月3日(土)~11月13日(日)すでに会期終了
会場: 東京都写真美術館
出品作品:
3階展示室:シリーズ<今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない>
2階展示室:シリーズ<廃墟劇場> , シリーズ<仏の海>
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