【残像日録】ラブドラム〜 秋の京都で出会ったやさしい音色
去年の秋、京都を旅した時のこと。銀閣寺から伸びる哲学の道を永観堂に向けて歩いていると、何となく懐かしいような響きが耳に届いた。いつかのうたた寝の、夢の中で聞いたことがあるような、輪郭のあいまいな、やわらかい音色......。さらに歩いていくと、ひとりの青年が路上に座り、日差しの中で見たことのない楽器を奏でていた。黒くて大きくて繊細な彫り模様が入っている打楽器。それを抱え慈しむようにマレットで叩いている。まるで光と風と戯れるようなやさしい音色。響きが透き通っていて、自然の音に限りなく近い気がした。たちまち惹きつけられてしまった。ラブドラム(Rav Drum)という楽器だという。