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マンダラデザインアートブログのsachiです。
東京都美術館に、伊庭靖子展「まなざしのあわい」を観に行きました。
画家の眼とモティーフのあわいにある世界に魅せられた伊庭靖子(1967-)は、触れたくなるようなモティーフの質感やそれがまとう光を描くことで、その景色を表現し続けてきました。自ら撮影した写真をもとに制作するスタイルは変わりませんが、近年、それまで接近していたモティーフとの距離が少しずつ広がってきました。空間や風景といったものへの関心が高まり、まわりの風景が広がることで、伊庭の絵画は新たな展開を見せています。
出典:https://www.tobikan.jp/yasukoiba/index.html
伊庭靖子という画家についての前情報はなかったのだが、美術館で目にした上のフライヤーを見て、たちまち心を奪われた。
油彩でもこれだけ透明感に満ちた表現が可能なんだ。。
どの作品も光に溢れている。
暗めの描写であっても、そこにはやはり控えめな光の存在を確かに感じさせる。
2003年から制作されたクッションや寝具などを描く作品群には、目が釘付けになった。対象への光の当たり方の描写が的確。
明るく照らされているところ、それよりも少しだけ影になっているところ。
すべてはグラデーション。当たり前のことかもしれないけど、グラデーションで光は表現できるのだと素人ながらに感じた。
次に質感。例えばクッションの表面にフロッキーっぽいふわっとした模様のパーツがありありと描かれており、平面なのに立体を感じさせる。手で触れてみたくなるような親しみ深さ。
いいなぁ。。
2016年からのガラス器を描いた作品は、モチーフを透明感なアクリルボックスに入れているらしいが、映り込みが美しく、背景のボケなども楽しかった。
「アクリルボックスで四方八方の風景を全部映し込んでいくと、この中にまわりの空間を集約していると思った」 ー 伊庭靖子氏
伊庭靖子、Untitled 2017-01、油彩・カンヴァス、宮内正幸蔵、撮影:木奥惠三 Keizo Kioku
出典:https://www.tobikan.jp/yasukoiba/index.html
モチーフの白い陶器に透ける薄い水色の模様
下の面に映じる滑らかな輪郭
向こう側に落ちる器の淡い影
窓の外に見える強い日差し。
細部も魅力的で見飽きない。
見ているだけで手に触れた感触までもが想像できる。
しかし、全体的にあの透明感はどのような手法を使うと出るのだろうか。
撮影可能なエリアもあった。
モチーフの撮影を都美術館内で行い、それをもとに描いた作品シリーズとのこと。
その他、版画シリーズや立体視の映像作品もあり、この画家のポテンシャルの高さを垣間見ることができる、小規模だが良質な展示だった。
会場 東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
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