『無趣味のすすめ』/ 村上龍 著
モノトーンで「禅」な印象の装丁。
表紙をあけると余白の大きなレイアウト、そして大きめの
文字。高齢者向きか?
モチベーションや希望、近代化の終わりやグローバリズム
などの龍的語彙満載の知的でマッチョなエッセイ集。
基本的にいつも彼があちこちで書いていることが展開
されている一冊だ。
自分がこれ読んでよかったなぁ、と思ったのは、
あらたに書き下ろされた最後の章「盆栽をはじめるとき」
を読んだとき。
引用
ーー
でもいつか盆栽を始めるときが来るのかなと、今でもときどき考える。そのときわたしは小説を書くのを止めているだろう。その想像は決して悪いものではない。盆栽は案外すごい世界で、きっと奥が深く面白いだろう。でも、そうなったら、おそらくわたしは盆栽の小説を書き始めるのではないだろうか。そして盆栽の小説を書き始めたら、たぶん盆栽は止めてしまうのだろう。ーー
この部分がこの本のすべてなのだと自分は思う。
さらりと書かれているが、めちゃくちゃ練られた数行だ。
盆栽をやり能を楽しんでいる村上龍などあまり想像したくはない。
だが、こういう書き方をするのが彼の魅力であり、才能なのだと
思う。
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